夜の滝戸さん

介護の仕事は24時間365日交替勤務になります。当たり前ですが年中無休、盆暮れ正月は関係ありません。当然夜勤勤務に就くことがあります。この夜勤中にはいろんな出来事がありお話を少ししたいと思います。

 

夜勤は21:00からの勤務になります。遅番からの申し送りを聞きパソコンで一日の状況を確認します。「体調が悪い方はいないか」とか「昼間に怪我をした方はいないか」とか「眠剤を飲んでいるのか」とか把握します。

遅番によりほぼすべての入居者が各自自分の部屋でお休みしていますが、なにせ痴呆症の方が多数いますので、寝ない方もいます。寝ないで歩いて徘徊する方もいますし、車いすを動かし徘徊する入居者もいます。

 

私の勤めていた施設はど田舎の山と川しかない所にあります。夜勤中は外は真っ暗です。夜勤はそのフロアには1人しか職員はいません(他のフロアには同じく夜勤さんがいます)夜勤中は入居者に寝てもらうために極力照明は点けずにいますので薄暗い中での業務になるので薄気味悪さと相まって霊的に怖さを感じることがあります。

 

滝戸さんの話

滝戸さんは93歳になります。右腕右足麻痺と痴呆症による昼夜逆転があります。昼間車いすでウトウトすることも多く、夜活発になることがあります。私が夜勤の時に車いすでの徘徊がありました。本来であれば夜勤中は入居者は寝ています。でも寝ない方には飲み物を出したり、その人用の看護師からの預かりの眠剤を飲ませたりすることがあります。でも寝ない方は寝ません。

滝戸さんは夜寝なくても徘徊はするが大きな声で騒いだりはしないので私は徘徊の見守り程度で、「もう寝ましょう」「夜遅いですよ」などと時々声掛けをして睡眠を促します。でも寝ない方はやはり寝ません。

夜中中ずっと徘徊している方もいます。よくそんなに体力があるなぁと思う時もあります。

夜02:00頃になっても寝ないで徘徊している滝戸さんに近づき、「滝戸さんそろそろ寝ましょう」と声掛けすると、左手で窓の外を指差しました。

滝戸さんが私に「ほーら来た、大勢来た、100人位来た」

私・・・

「マジでこの人何が見えてるの」と思い外を覗いても当然何も見えません。

霊的なものをあまり感じない私でも、体に寒気が走る一瞬でした。

 

特別養護老人ホームに入居している方は、高齢や痴呆症などにより健常者とは全く違う世界で生活をしています。全員とは言いませんがほとんどの方が「この世」と「あの世」の中間にいる人です。(この書き方に批判をする方もいるかとは思いますが、特養の仕事をしている方は理解してくれると思います)この中間にいる人にはやはり健常者とは違うものが見えているんだなぁーと思う出来事でした。

 

まだまだいろんな出来事がありますので次回も少しずつお話しをていきたいと思います。